【高知建築めぐり】旅で出会った世界的建築家の傑作13選|隈研吾・安藤忠雄・沢田マンションまで(2025年3月訪問)

建物探訪

こんにちは!2025年3月の高知旅行で訪れた建築スポットをまとめました。

高知は隈研吾が「自分の原点」と語る梼原町を中心に、世界的建築家の傑作が点在する建築好き必訪のエリアです。さらに安藤忠雄・日本設計による名建築や、夫婦がセルフビルドで建てた伝説のマンションまで、個性豊かな建築が集まっています。

高知はなぜ建築の宝庫なのか

高知県では1980年代から「地域の建築文化を高めよう」という機運が高まり、世界的な建築家を積極的に起用するプロジェクトが相次ぎました。隈研吾・安藤忠雄・高橋晶子ら建築界の巨匠たちが高知の風土に触発されて傑作を生み出しており、今や建築ファンが全国から訪れるエリアになっています。

梼原町の隈研吾建築群|世界唯一・町全体がミュージアム

隈研吾さんと梼原町の出会いは1987年。梼原町を訪れた隈研吾さんは梼原公民館の木造建築に感銘を受けて自身も保存活動に携わるようになります。そこから梼原産の木材を使って梼原町総合庁舎(2006年)、雲の上のギャラリー(2010年)、まちの駅「ゆすはら」(2010年)、YURURIゆすはら(2018年)、雲の上の図書館(2018年)と様々な施設が生まれました。隈研吾さんは梼原町を”自分の原点”と語り、今や世界的な建築家となっています。

梼原町内5か所6つの隈研吾作品が集まる世界でも類をみない梼原町は町全体がミュージアムと言えます。

① まちの駅「ゆすはら」(マルシェ・ユスハラ)|茅葺きの外壁が衝撃的な道の駅・2010年竣工

訪問:2025年3月

雲の上のホテル別館として2010年に誕生した本施設は交流・情報発信・地域連携の機能を備えています。特徴は何と言っても道路側に面する外壁一面の茅葺。これは梼原町のもてなし文化「茶堂」の茅葺屋根に倣ったもので、茅のファサードは特徴的な景観を生み出すだけではなく通気性と断熱性に優れています。内部空間は「まちの中の”森””がコンセプトで1階から3階まで吹き抜けた館内には杉丸太の柱を林立させ、森の中を巡るようなイメージになっています。

現代建築に茅葺きという日本の伝統素材が組み合わさった外観は初めて見たとき「なんだこれ!」と思わず声が出ました。建物全体から「この町の文化を大切にする」という設計者の意志が伝わってくる傑作です。

建築年:2010年竣工
設計:隈研吾建築都市設計事務所(日本)
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1196-1

② 梼原町役場(梼原町総合庁舎)|杉パネルのモザイクと木組みの廊下・2006年竣工

訪問:2025年3月

旧庁舎の老朽化が著しかったことから2006年に立て替えられました。当時隈氏が教授を務めていた慶応大学理工学部のシステムデザイン工学科との共同作品です。杉パネルをモザイク状に配置した外観も特徴的ですが一歩中へ入ると広がるアトリウムも圧巻。この大規模空間を支えるのは4本の核柱を1本の柱と見立てた「組柱」と格子状に組み合わさった「重ね梁」で複雑かつ大胆に杉材を組むことで”木のまち梼原”を感じさせるデザインに仕上がっています。

役場という公共建築でこれほど大胆に木を使った建築は他に見たことがありませんでした。杉のモザイクパターンが刻まれた外壁は「木のまち」のアイデンティティを正面から表現していて、建築が町の誇りになっている好例です。

建築年:2006年竣工
設計:隈研吾建築都市設計事務所+慶應義塾大学システムデザイン工学科(日本)
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1444番地1

③ 複合福祉施設YURURIゆすはら|ロギール氏の手漉き和紙が内装を彩る・2018年竣工

訪問:2025年3月(外観のみ)

内装には土佐和紙工芸作家・ロギール氏の手漉き和紙をはじめとする自然素材を用いて我が家のような温かみのある雰囲気に。衛生上木材を使えない箇所には木目調の建材で代用するなど施設に通う人・暮らす人・働く人のための配慮が随所に施されています。バリアフリーと建築デザインが高次元で融合した施設と言えます。

YURURIゆすはらは町民に開かれた「まちの家」。複合的な福祉施設として、町民の暮らしを支えています。利用者でないと中に入ることはできませんが雲の上の図書館と隣接しているので外観を楽しむことができます。

福祉施設という用途でも妥協しない隈研吾の姿勢が伝わってくる建物です。雲の上の図書館と並んで建つ姿は梼原町の新しい文化拠点として町に溶け込んでいました。

建築年:2018年竣工
設計:隈研吾建築都市設計事務所(日本)
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1212-2

④ 雲の上の図書館(梼原町立図書館)|靴を脱いで入る木の図書館・2018年竣工

訪問:2025年3月

梼原町の隈建築でひときわ大きな話題となったのが2018年5月に開館した雲の上の図書館です。図書館としては珍しく入り口で靴を脱いで入館します。建物に足を踏み入れた瞬間目に飛び込んでくるのは森を思わせる無数の木組みで、四叉菱格子と呼ばれる工法でその一本一本に荷重を分散させることで高い耐震性を備えています。

靴を脱いで素足で木の床を歩きながら読書できる図書館は他に類を見ない体験でした。無数の木組みが天井まで伸びる空間は「梼原の森の中にいる」という感覚を与えてくれます。建築と機能が完全に一体化した隈研吾の集大成的な作品です。

建築年:2018年竣工
設計:隈研吾建築都市設計事務所(日本)
住所:高知県高岡郡梼原町梼原1212-2
開館時間:9:00〜20:00(火曜・最終金曜休館)
入館料:無料

⑤ 道の駅ゆすはら|隈研吾建築と隣接する梼原の物産拠点

訪問:2025年3月

梼原町の隈研吾建築群と隣接する道の駅で、梼原産の木材を使った建物が道の駅にも採用されています。梼原の特産品・地元食材・お土産が揃っていて隈建築めぐりの拠点として立ち寄るのにぴったりの施設です。

住所:高知県高岡郡梼原町梼原1212
開館時間:9:00〜18:00

⑥ 雲の上のギャラリー(木橋ミュージアム)|刎橋構造で空中に浮かぶ木橋・2010年竣工

訪問:2025年3月

雲の上のホテルに増築された渡り廊下棟・ギャラリー棟・ブリッジ棟から成ります。渡り廊下棟は軒を支えるための日本の伝統工法「斗栱(ときょう)」をモチーフにしました。構造には「やじろべえ型刎橋(はねばし)」という架構形式を採用しており世界でも類を見ない建築となっています。

空中に浮かぶ木橋という世界でも類を見ない構造には正直「本当にこれが成立するの?」と驚きました。日本の伝統的な木橋の技術を現代建築に転用した隈研吾の発想の豊かさが凝縮された一棟です。内部には「隈研吾の小さなミュージアム」があり建築模型などの資料を展示しています。

建築年:2010年竣工
設計:隈研吾建築都市設計事務所(日本)

住所:高知県高岡郡梼原町梼原
開館時間:10:00〜16:30
入館料:大人200円・中学生以下100円

設計者|隈研吾(1954年〜)

隈研吾さんは梼原産の木材を使って梼原に様々な施設を設計してきました。梼原町を”自分の原点”と語り今や世界的な建築家となっています。

梼原町との出会いで木材・自然素材を徹底的に使いこなす建築スタイルを確立し、それが国立競技場(2019年)の設計者選定につながりました。まさに梼原が現在の隈研吾を生んだと言える場所です。

隈研吾の他の代表作
国立競技場(日本・東京、2019年)
根津美術館(日本・東京、2009年)
サニーヒルズジャパン(日本・東京、2013年)
V&Aダンディー(英国・スコットランド、2018年)

⑦ 横倉山自然の森博物館|安藤忠雄設計・森に溶け込むコンクリートの殿堂・1997年竣工

訪問:2025年3月

神秘の山・横倉山についてより深く学ぶなら、ふもとの森に抱かれるように佇む横倉山自然の森博物館へ。安藤忠雄氏が設計を手掛けたコンクリートの建築はモダンでいて周囲の自然と美しく調和します。ゆるやかな長いスロープを上がり、回廊を進んでいくアプローチがドラマティックです。

博物館には珍しく安藤建築らしく自然光がふんだんに差し込む空間が印象的です。大きな窓やスリットから入る光の角度で時間帯によって見える景色が変わっていきます。

「コンクリートの詩人」安藤忠雄が高知の山奥に作り上げた傑作です。長いスロープを歩いてアプローチするドラマティックな体験は安藤建築ならでは。光と影のコントラストが作り出す空間は時間を忘れて見入ってしまう美しさでした。

建築年:1997年竣工(平成9年10月11日開館)
設計:安藤忠雄建築研究所(日本)
住所:高知県高岡郡越知町横倉山
開館時間:9:00〜17:00(火・水曜休館)
入館料:大人500円・高校・大学生400円・小中学生200円

設計者|安藤忠雄(1941年〜)

安藤忠雄は独学で建築を学んだ大阪出身の建築家で1995年にプリツカー賞を受賞しています。コンクリートの打ち放しと光・水・自然を組み合わせた独自のスタイルが世界的に高く評価されています。

安藤忠雄の他の代表作
光の教会(日本・大阪、1989年)
地中美術館(日本・直島、2004年)
21_21 DESIGN SIGHT(日本・東京、2007年)
表参道ヒルズ(日本・東京、2006年)

⑧ 沢田マンション|夫婦がセルフビルドで建てた「日本の九龍城」・1971年着工

訪問:2025年3月(外観)

沢田マンションは鉄筋コンクリート建築を専門職として手掛けたことのない夫婦が(のちにはその子供も加わって)建築した集合住宅です。鉄骨鉄筋コンクリート構造・敷地550坪・地下1階地上5階建て(一部6階)・入居戸数約70世帯・約100人居住。増築に増築を重ねた外観から軍艦島と並んで「日本の九龍城」とも呼ばれ建築物探訪の名所のひとつとして知られています。

建築家でも設計士でもない夫婦が手作りで建てたマンションが「建築の名所」として全国から見学者を集めるという唯一無二の存在です。一般的な建築の文脈とは全く異なる「人間の意志と情熱」が建築になった場所として、プロの建築家の作品とはまた違う衝撃を受けました。

建築年:1971年着工・1985年頃ほぼ現在の規模に
設計・施工:沢田嘉農・裕江夫妻(セルフビルド)
住所:高知県高知市薊野北町1丁目
見学:外観は自由・内部は事前連絡が必要

⑨ オーテピア高知図書館|都道府県立と市立の合築は日本初・2018年開館

訪問:2025年3月

オーテピアは高知市民図書館と高知県立図書館の共同運営によるオーテピア高知図書館・高知声と点字の図書館・高知みらい科学館からなる複合施設です。都道府県立図書館と市立図書館の合築は日本初で世界初です。2018年7月24日に開館しました。

日本初の県立・市立図書館合築という挑戦的なコンセプトを建築として実現した施設です。高知城のすぐ近く・追手筋という絶好のロケーションに建つモダンな外観は高知の新しい文化の拠点としての存在感があります。

建築年:2018年竣工・開館
設計:久米設計(日本)
住所:高知県高知市追手筋2丁目1-1
開館時間:9:00〜21:00(月曜休館)
入館料:無料

⑩ 高知市役所・高知県庁|昭和の近代建築が城下町に残る

訪問:2025年3月(外観)

高知市役所と高知県庁はいずれも昭和期に建てられた近代建築で、高知城のお膝元という歴史的なロケーションに建っています。戦後の日本建築の様式を今に伝える建物として、現代建築と合わせて見ることで高知の建築の歴史的な流れを感じることができます。高知城・追手門と並んで建つ姿は城下町としての高知の景観を形成する重要な要素です。

⑪ 高知県立高知城歴史博物館|日本設計・中間層免震構造を採用した城下町の博物館・2017年竣工

訪問:2025年3月

高知城のお膝元に高知県の歴史文化財を収蔵・展示する博物館です。城下町にある館として歴史性を感じ品格と質実・堅牢さを併せ持っています。資料の保存・活用の両立・高度な博物館機能の確保・歴史・地域の架け橋・新たな景観形成の理念を満足する建築性能を充分に持ち合わせています。中間層免震構造の採用を行い大地震後の津波・洪水等での冠水対策を同時に満足させる構造計画となっています。

高知城の石垣と向き合うように建つ外観は「土佐漆喰の白」「県産木材の温かみ」と高知の素材にこだわったデザインが印象的でした。BCS賞・公共建築賞など数多くの建築賞を受賞した実力派の建築です。

建築年:2017年竣工(2016年施工・2017年開館)
設計:日本設計(日本)
施工:清水建設(日本)
住所:高知県高知市追手筋2-7-5
開館時間:9:00〜18:00(月曜休館)
入館料:大人700円

⑫ 高知県立坂本龍馬記念館|磯崎新審査のコンペで高橋晶子が勝ち取った傑作・1991年竣工

訪問:2025年3月

1987年に磯崎新を審査員長とする構想設計競技の募集が開始されました。1988年9月に応募総数475点の中から最優秀に選ばれたのは当時まだ篠原一男アトリエに勤務していた高橋晶子らの案であり1991年11月の開館を迎えました。抽象的な素材感を持った幾何学的な形態が軸をずらして貫入し合うその姿は磯崎新らが再注目させたロシア構成主義に通じ篠原一男の「第四の様式」を彷彿とさせます。

外壁ほぼ全てをミラーガラスで覆い太平洋の方向までグーンと飛び出た展示室は一度見れば忘れられないほどのインパクトがあります。

桂浜の絶景に向かって突き出すミラーガラスの箱は「龍馬が太平洋を見つめた」という歴史的文脈と見事に呼応しています。建築界の巨匠・篠原一男の薫陶を受けた高橋晶子の処女作として建築史的にも重要な一棟です。

建築年:1988年設計・1991年竣工(2018年新館グランドオープン)
設計:高橋晶子+高橋寛/ワークステーション(日本)
構造設計:木村俊彦構造設計事務所
施工:大成建設・大旺建設工事共同企業体
住所:高知県高知市浦戸城山830
開館時間:9:00〜17:00(原則無休)
入館料:大人700円

設計者|高橋晶子(1960年〜)

高橋晶子氏は建築家篠原一男氏のアトリエに従事していたこともあり龍馬記念館は同氏が世に大きく知られる処女作にもなっています。現在は武蔵野美術大学造形学部建築学科教授を務めています。

師である篠原一男の代表作
谷川の住宅(群馬、1974年)
東京工業大学 百年記念館(東京、1987年)

高知建築めぐりのモデルコース

梼原エリア(半日)
まちの駅「ゆすはら」 → 梼原町役場 → 雲の上のギャラリー → 雲の上の図書館 → YURURIゆすはら(すべて徒歩圏内)

高知市内エリア(半日)
オーテピア → 高知県立高知城歴史博物館 → 坂本龍馬記念館(車で約30分)

横倉山エリア(半日)
横倉山自然の森博物館 → 沢田マンション(車で約1時間)

1日コース 梼原エリア → 横倉山自然の森博物館 → 高知市内(沢田マンション → 高知城歴史博物館 → オーテピア → 龍馬記念館)

高知で出会った建築家まとめ

隈研吾(日本) → 梼原町の6建築(1994〜2018年)
安藤忠雄(日本) → 横倉山自然の森博物館(1997年)
高橋晶子(日本) → 坂本龍馬記念館(1991年)
日本設計(日本) → 高知県立高知城歴史博物館(2017年)
久米設計(日本) → オーテピア(2018年)
沢田嘉農・裕江(セルフビルド) → 沢田マンション(1971〜1985年)

まとめ|高知は隈研吾の原点にして建築の聖地

高知は隈研吾が「自分の原点」と語る梼原町を中心に、安藤忠雄・高橋晶子ら日本を代表する建築家の傑作が点在する建築好き必訪のエリアです。

梼原町では1町に6棟もの隈研吾建築が集まるという世界でも類を見ない体験ができます。高知城の城下町に建つ近代建築から夫婦が手作りで建てた沢田マンションまで、建築の多様な可能性を1つの旅で体感できる高知はまさに建築の聖地です!

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