こんにちは!2022年2月の熊本旅行で訪れた建築スポットをまとめました。
熊本は1988年にスタートした「くまもとアートポリス」という建築文化向上プロジェクトによって、世界的な建築家たちの傑作が公共建築として次々と生まれた日本屈指の建築都市です。今回の旅で訪れた4棟はすべてこのプロジェクトの一環として建てられました。
くまもとアートポリスとは
1988年に当時の知事・細川護熙(後に総理大臣)が提唱した建築文化向上プロジェクトで、国内外から優れた建築家を起用して熊本県内の公共建築・公共施設のデザイン水準を高めることを目的としています。コミッショナー制度を採用し初代コミッショナーに磯崎新を迎えたことで国際的な注目を集めました。
篠原一男・山本理顕・安藤忠雄・伊東豊雄・妹島和世・エリアス・トーレスなど国内外の著名建築家が参加し、熊本県内に約100棟以上の作品が生まれています。
① 熊本県警 熊本中央警察署|篠原一男設計・くまもとアートポリス第1号・1990年竣工
訪問:2022年2月(外観)
くまもとアートポリスの記念すべき第1号作品として1990年に竣工した熊本中央警察署(当時の名称は熊本北警察署)は、東京工業大学で長年教壇に立ちながら「住宅は芸術である」という哲学を掲げた建築家・篠原一男の設計によるものです。
直方体のコンクリートの塊が積み重なるような力強い外観は、篠原一男が晩年に到達した「第四の様式」と呼ばれるスタイルの代表例です。「警察署」という権威的な用途の建物に最も個性的なデザインを持ち込んだ点がアートポリスらしい挑戦でした。実際に外観を見ると「これが公共建築なのか」と驚かずにはいられない存在感があります。
建築年:1988年設計・1990年11月竣工
設計:篠原一男+太宏設計事務所(日本)
住所:熊本県熊本市中央区水前寺6-18-1
アクセス:市電「水前寺公園駅」から徒歩約3分

設計者|篠原一男(1925〜2006年)
静岡県生まれ。東京工業大学で長年教鞭をとったプロフェッサー・アーキテクト。「住宅は芸術である」という宣言のもと日本の伝統建築の空間性を抽象化した独自の建築スタイルを確立しました。伊東豊雄・坂本一成・高橋晶子ら多くの著名建築家を育てた師としても知られています。2010年のヴェネツィアビエンナーレでメモリアル金獅子賞を受賞。
篠原一男の他の代表作
から傘の家(日本・東京、1961年・現ドイツ・ヴィトラキャンパスに移築)
白の家(日本・東京、1966年)
上原通りの住宅(日本・東京、1976年)
ハウス・イン・ヨコハマ(日本・神奈川、1984年)
② 熊本県営 保田窪第一団地|山本理顕設計・コモンアクセス形式の革新的集合住宅・1991年竣工
訪問:2022年2月(外観)
くまもとアートポリス第2号作品として1991年に竣工した保田窪第一団地は、2024年にプリツカー賞を受賞した山本理顕の設計による公営集合住宅です。
3つの住棟と集会室が中央広場を囲む配置が特徴で、外部から中央広場に入るには必ず住戸内か集会室を経由しなければならない「コモンアクセス形式」を採用しています。住民同士のコミュニティを建築の構造そのもので実現しようとした革新的なアプローチは、当時の公営住宅の常識を覆すものでした。
5階建てのコンクリート躯体の上にヴォールト屋根が乗る独特の外観は、「公営団地」という先入観を完全に裏切るスタイリッシュさです。「コミュニティと建築」を一貫して追求してきた山本理顕の思想が凝縮した初期の傑作といえます。
建築年:1988年設計・1991年8月竣工
設計:山本理顕設計工場(日本)
住所:熊本県熊本市中央区保田窪1丁目周辺
アクセス:市電「市立体育館前駅」から徒歩約10分



設計者|山本理顕(1945年〜)
中国・北京生まれ。東京藝術大学大学院修了後1973年に山本理顕設計工場を設立。地域コミュニティと建築の関係を「地域社会圏」という独自の概念で追求し続け2024年にプリツカー賞を受賞。日本人では9人目の受賞者で日本は世界最多受賞国となりました。
山本理顕の他の代表作
埼玉県立大学(日本・埼玉、1999年)
公立はこだて未来大学(日本・北海道、2000年)
横須賀美術館(日本・神奈川、2007年)
ザ・サークル チューリヒ国際空港(スイス、2013年)
③ 熊本県立美術館 分館|エリアス・トーレス+ホセ・A・M・ラペーニャ設計・天草石の外壁が熊本城と調和・1992年竣工
訪問:2022年2月(外観)
くまもとアートポリスの第33号作品として1992年に竣工した熊本県立美術館分館は、スペインを代表する建築家コンビ・エリアス・トーレスとホセ・A・M・ラペーニャの設計です。旧熊本県立図書館を大規模改築した建物で、熊本城の石垣との調和を重視して天草産の自然石をファサードに使用しています。
地元産の天草石による重厚なファサードは熊本城の石垣と見事に呼応していて、歴史的な城下町の景観に現代建築が溶け込む好例として高く評価されています。内部はエントランスの吹き抜けが特徴的で木の温もりを感じられる空間になっています。JIA25年賞を受賞した時間の試練に耐えた傑作です。
建築年:1992年10月竣工
設計:エリアス・トーレス+ホセ・A・M・ラペーニャ+大和設計(スペイン・日本)
施工:淺沼組・坂口建設 建設工事共同企業体
受賞歴:JIA25年建築選
住所:熊本県熊本市中央区千葉城町2-29
アクセス:市電「市役所前駅」から徒歩約5分
開館時間:10:00〜20:00(月曜休館)
入館料:企画展により異なる


設計者|エリアス・トーレス+ホセ・A・M・ラペーニャ(スペイン)
バルセロナを拠点とするスペインの建築家コンビ。地中海の光・素材・風土を活かした建築で知られ、スペイン国内外で多くの公共建築を手がけています。地域の素材と歴史的文脈を尊重しながらモダンデザインと融合させる手法が特徴的で、熊本での天草石の使用はその哲学を見事に体現しています。
エリアス・トーレス+ラペーニャの他の代表作
バルセロナの歩道橋「アルミラル・セルベラ橋」(スペイン、1992年)
イグアラダ共同墓地(スペイン、1991年)
④ 熊本県立装飾古墳館|安藤忠雄設計・前方後円墳をモチーフにした古代への扉・1992年竣工
訪問:2022年2月
くまもとアートポリスの第21号作品として1992年に竣工した熊本県立装飾古墳館は、プリツカー賞建築家・安藤忠雄の設計です。「コンクリートの詩人」安藤忠雄が古代遺跡のただ中に建てた傑作で、全体の形状が前方後円墳をモチーフにしています。
駐車場から木立の中の坂道を歩いてアプローチし、屋外階段を登ると眼前に岩原古墳群が広がるという設計は「単なる展示施設ではなく古墳群を含めた環境全体を見せる博物館」というコンセプトを見事に実現しています。地下の展示室へと続く長いスロープを歩くとき「古代から現代へとつながる時間の流れ」を体感できる体験は安藤建築ならではの演出です。
建築年:1992年4月竣工
設計:安藤忠雄建築研究所(日本)
住所:熊本県山鹿市鹿央町岩原3085
開館時間:9:00〜17:00(月曜休館)
入館料:大人430円・大学生260円・高校生以下無料



設計者|安藤忠雄(1941年〜)
大阪生まれ。独学で建築を学び1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。コンクリートの打ち放しと光・水・自然を組み合わせた独自スタイルが世界的に高く評価され1995年にプリツカー賞を受賞しました。高知・鹿児島・熊本と九州・四国各地に傑作を遺している建築家でもあります。
安藤忠雄の他の代表作
光の教会(日本・大阪、1989年)
地中美術館(日本・直島、2004年)
表参道ヒルズ(日本・東京、2006年)
横倉山自然の森博物館(日本・高知、1997年)※高知建築記事でも登場
鹿児島大学 稲盛会館(日本・鹿児島、1994年)※鹿児島建築記事でも登場
熊本建築めぐりのモデルコース
熊本市内エリア(半日)
熊本中央警察署 → 保田窪第一団地 → 熊本県立美術館分館(すべて車で30分圏内)
山鹿エリア(半日)
熊本県立装飾古墳館(熊本市内から車で約50分)
1日コース
午前:熊本市内の3棟めぐり → 午後:山鹿エリアの装飾古墳館
熊本で出会った建築家まとめ
篠原一男(日本・1925〜2006年) → 熊本中央警察署(1990年)・くまもとアートポリス第1号
山本理顕(日本・1945年〜) → 保田窪第一団地(1991年)・2024年プリツカー賞受賞
エリアス・トーレス+ラペーニャ(スペイン) → 熊本県立美術館分館(1992年)
安藤忠雄(日本・1941年〜) → 熊本県立装飾古墳館(1992年)・1995年プリツカー賞受賞
まとめ|熊本は世界に誇る建築文化プロジェクト「くまもとアートポリス」の聖地
今回訪れた4棟はすべてくまもとアートポリスの作品で設計者4人のうち2人がプリツカー賞受賞者というまさに世界最高水準の公共建築群です。
1988年のプロジェクト発足から35年以上が経過した今も熊本の街には世界的建築家の傑作が公共建築として市民の日常に溶け込んでいます。「建築で地域文化を高める」というビジョンを本気で実現した熊本は、日本の建築史において特別な場所です。
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